お絵かきが大好きな子ども達。
明るい色を画面いっぱい、のびのびとした絵を描いている姿はとても微笑ましいですよね。
でも、あれ?黒や茶色の暗い色、画面の隅に小さく描かれた絵など…時々、気になる絵を描く子ども達。
それは子どもからのサインです。
気になる絵を含め、普段、何気なく子ども達が描いている絵の意味を心理学の側面から読み取ってみましょう。
目次
子供の良い絵とは?
子供が描く絵で“良い絵・悪い絵”はあるの?
基本的に子どもの絵に良い・悪いはないと思います。
子ども達は、今一番興味のあるもの、描きたいものを衝動的にお絵かきで表現しているだけなのです。
私達大人が、たわいもないおしゃべりを楽しむのと同じ感覚です。
特に言葉がまだまだ未熟な子ども達にとって、絵は簡単に思いや考えなどを表現できる手段です。
ですから、夢中になって楽しそうに描いていれば、それだけでOK。
色使いや構図に気になる点がでてきたとしても、それもまた子どもの正直な気持ちの表れなので、否定せずに思い切り描かせてあげて欲しいです。
一見心配そうな絵(暗い・小さい)を描く子ども達でも、直接子どもに絵について話を聞けば、「あ、そういうことだったんだ!」納得させられることもあります。
例えば、真っ黒なぐるぐる線をたくさん描く子…一見奇妙に見えますが、子どもに聞けば「かぶと虫だよ!」とあっさりバッサリ心配を払拭させられることも。
もし、気になる表現が出てきたら疑心難儀になる前に、まずは、子どもとその絵について話をしてみましょう。
会話の中で、さらに気になることを話すようであれば、その時こそ、今の環境を見直すべきサインだとして受け止めましょう。
子どもの心の回復と改善に向けて、接し方を変えたり、相談できる人に話を聞いてもらったりするなどして、次の対策を考えていけると良いですね。
子どもの絵を心配に感じるという方は、むしろご心配なく。
それだけ子どもをよく観察し、子どもに対して目と心が行き届いている証です。
本当に心配なのは、絵を通してSOSのメッセージを出しているのに、それに誰も気づけない…そうした環境こそが最も心配な状況です。
絵を描くことで得られる効果
絵を描くことで得られる効果は、いろいろあります。
線や○を描いたら何かに見えてきた!これは顔にしよう、車にしよう…など、描きながら想像力を働かせます。
心理面では、言葉で上手く言えないことなど、正直な気持ちが無意識のうちに絵の中に表れます。
このように、絵を描くことで想像力を高めたり、心の健康を保ったりするというお話は、よく耳にするかと思います。
その他にも絵を描くことで、目と手を上手く連動させる身体的能力を鍛えたり、イメージを形にするための発想力や実行力などを培ったり、技術的な面での発達も促していきます。
そう考えると、お絵かきが子ども達にとってどれだけ大切で有能なものか…計り知れませんね。
先にも述べましたが、子ども達にとって「お絵かき」は「おしゃべり」のようなものです。
楽しい気持ちも、悲しい気持ちも、全て紙の上に正直に表します。
心が十分に満たされている子どもは、その幸せな気持ちを明るい色や柔らかい線や形で表現します。
描きながら幸せを反芻するように、のびのびと楽しく描きます。
反対に、気持ちが十分に満たされず、不安や緊張のある子どもは、暗い色使いでトゲトゲした線や形を表現します。
そうした攻撃的な絵を描くことで、不満を絵の中に吐き出したり、心の調和を取ろうとしたりするのです。
近年、大きな災害の後などに、子ども向けのアートセラピーが注目されてきました。
辛く悲しい思いを絵に描くことで浄化させ、心の健康を回復させていく。
言葉でのカウンセリングがまだ難しい子ども達にとって、アートセラピーは有効な方法なのかもしれません。
何気ないお絵かきも、実は子どもの健やかな成長にとって欠かせないものなのです。
安全面や部屋の汚れ対策を十分に考慮して、子どもが、いつでも・すぐに・自由にお絵かきできる環境があれば理想的ですね。
子供の絵で分かる心理状態。注意したい子供の絵の特徴とは?
目・太陽・家族など特定のモチーフには意味がありますか?
子どもの描く“もの”に意味があるのか?
こちらも、研究されてきた中で、花は母親・太陽は父親・家は自分など、ある程度の共通認識はあるようです。
目に関しては、現時点で何かを表しているのかどうか判断が難しいようです。
これは私の勝手な予想なのですが、目を描く場合、見られている(監視されている)窮屈さを表している、もしくは、注目されたいという願望が表されているのではないかと考えます。
単に描きたいから描いたのかも知れないし、身体的に目に違和感(病気)があり、それを絵に表現する場合もあるようです。
これらのモチーフが、何色で・どのように描かれているかを判断材料に、子どもの心理を読み解く方法もあるようです。
ただ、子どもの絵を見るときに注意したいことがあります。
それは、その時々の子どもの一時的な感情(怒られた直後でイライラ・くよくよしている気持ちなど)が表されているだけであったり、
絵本や友達の絵などを真似て描いていたりする場合もあるので、一様に“モチーフ=意味”と決めつけて判断するのはお勧めしません。
こういう傾向があるのかな?
と子どもの絵を読み解く上で、ヒントとして捉えるくらいが良いでしょう。
色の意味?
色の好みは、性別や年齢によっても傾向があるようです。
まず、男の子はモノトーン、青や緑などの寒色系を好み、女の子は赤・オレンジ・ピンクなどの暖色系を好む傾向があるようです。
これも全ての男女に当てはまるわけではないので、うちの子は違う!などと慌てることはないですよ。
男の子の中にも赤を好む子も多いですし、女の子は年齢があがるにつれて水色を好む子が増えてきます。
全体的な傾向として観察してみると大変興味深いです。
選んだ色によって、今の心理状態を把握するというのは、大人向けの色彩心理やセラピーでも用いられています。
赤はエネルギーに満ち溢れている状態、黄は注目されたい心情、青は静かさを求めているなど、それぞれの色に含まれるメッセージがあります。
また、同じ赤でも、明度や彩度の違いによって意味が異なってくるので、専門的に見ると本当に奥深いものです。
子ども達が普段使い慣れているクレヨンなどはだいたい12色。
この中からどの色味を選ぶのかによって、ある程度の心理状態は把握できるかと思います。
ただ、先にもあげたように好みやその時々の感情などが影響する場合もあるので、すぐに判断するのは避けたいところです。
黒や茶色などで、暗い色味を選んだからといって、すぐに心配する必要もないでしょう。
虫を描くのに必要な色だったり、たまたま目に付いた(手に取った)のが黒だったり、黒って強そうでカッコイイ!と思っていたり…いろいろな要因が考えられますので。
しかし、黒や茶で画面を塗りつぶすような行為が何日も続くようであれば、注意が必要かも知れません。
これは以前、小学校に勤めていたときに経験したことですが、毎回、黒と茶色で画面を真っ黒にするという低学年の男の子がいました。
たまたま色彩心理学を学んでいたこともあって「茶色」と聞いたときに、真っ先に愛情不足を疑いました。
ご家庭の状況を聞くと、家族で飲食店を経営されていて、子どもと関わる時間が少ないというお話でした。寂しさを絵に吐き出していたのでしょうね。
その後、3年間その男の子の図工を担当していたのですが、徐々に色使いが変化し明るくなっていきました。
再度、ご家庭での様子を聞くと、今は男の子もお店の手伝いをするようになって、家族の時間も増えたとのことでした。
心の変化がハッキリと絵に表れていたのだなぁ…と、考えさせられる本当に貴重な体験でした。
絵の大きさや筆圧など
画面(紙)に対する絵の大きさは、子どもの性格や積極性によるところが大きいでしょう。
外交的で元気いっぱいの子どもは、画面からはみ出すのもお構いなし。
のびのびとした表現でいかにも子どもらしい絵を描きます。
自己肯定感が高く、心が安定している証です。
しかし、見方を変えれば、自己中心的で無鉄砲なところもあるでしょう。
反対に、内向的で神経質な子どもは、はみ出すのが嫌で、コンパクトにまとめて描こうとします。
子どもらしいのびのびした感じがなく心配でしょうが、無理に大きく描かそうとするとかえってストレスになるので、あまり指摘しない方がよいでしょう。
でも、こうした子ども達は、落ち着きがあり、技術面で力をつけていくのが早い傾向があります。
のびのびと大きく描かれた絵、小さくコンパクトに描かれた絵、一概にどちらが良いとも悪いとも言えないでしょう。
どのような子どもに育てたいのか、ご家庭の方針に合わせて、子ども達のエネルギーの向きを上手く調整されると良いでしょうね。
でも、決して無理強いしないように、長い目で変化と成長を見守りましょう。
筆圧は、子どもの感情のエネルギーに関わることもありますが、使う画材や手の筋力が筆圧に影響を与えることも多分にあります。
例えは、クレヨンで激しく殴り書きしたり、画面に叩きつけたり、乱暴な表現だな…と感じることがあるとします。
でも、それは「イライラした感情をぶつけている」か「腕の動きやリズム・音を楽しんでいる」のどちらかではないかと考えられます。
描かれた絵を見ただけでは判断し得ないので、お子さんの前後の行動なども合わせて判断していきたいですね。
その他絵の意味など
同じ物を繰り返し描くという行為に不安を感じられる方も多いようですね。
これは私の経験なのですが…幼い頃、キャラクターの手を真似して描いたら、すごくよく似せて描けた!
これがものすごく嬉しくて、数枚、紙いっぱいに手の絵を描いた記憶があります。
親が見たら手首から先の手ばかり描くって…何を意味しているのだろう?
と少し考えてしまいますよね(苦笑)
もうひとつ、我が子の例ですが、2、3歳の頃、ひたすら○ばかり並べて描く時期がありました。
よくよく話を聞けば、文字を書いているつもりだったようです。
字が書けないのを○で表していたのですね。
これを友達にあげるって…もらった方は、謎の暗号文ですよね(苦笑)
注意したい絵の兆候
幼児期の絵は、おしゃべりのような一過性のものなので、大抵の場合は心配ないと思います。
日頃から子どもの絵を観察して何か変化があれば、その時々で子どもに向き合っていきましょう。
まだまだスキンシップやコミュニケーションで解決が簡単な年齢なので、何かあっても対処しやすいです。
気をつけたいのは小学校に上がる頃でしょうか。
幼児期の自己中心的な感覚から、人との違いや比較に敏感になる年齢になるので、心の変化に注意したい時期です。
心理・発達の面で、絵を観察していくことが必要になってくるかと思います。
自信の無さが、細い線やこじんまりとした構図に表れたり、ストレスが、閉鎖的・攻撃的な色やモチーフに表れたりします。
何か違和感を感じたら、少しでも早くキャッチしてサポートできると良いですね。
発達の面では、高学年になっても物を立体的に捉えられないなど、空間認識を含む発達が遅れていることに気づくことがあります。
発達の遅れがあったとしても、適切なトレーニングによって技術や能力は必ず向上するのでご心配なく。
専門の相談機関などを訪ねてみましょう。
このように、子どもの絵の中には、様々な情報が詰め込まれています。
何か兆候がないかな?と、普段から興味を持って観察していきたいですね。
まとめ
子どもの絵について、その心理状態を知るための研究は、昔からいろいろな方がされてきました。
子どもの絵と心理・発達に関する書籍もたくさん出版されています。
興味のある方は、一度それらの内容を直接読まれることをお勧めします。
より理解が深まり、子ども達の絵を見るのが面白く感じられるでしょう。
普段から、お子さんがどんな色使いで、どんな絵を描いているのか、観察してみて下さい。
変化や成長が見つけられるようになれば、子どもの絵をみるのも楽しくなるし、子どもとの関わり方のヒントになったりします。
子どもの絵は、子どもの心を知るための1つのアイテムです。絵を基に、しっかり子どもと向き合い、子どもの健やかな成長を育みたいですね。
最後まで読んでくださりありがとうございました。