4歳の男の子と2歳の女の子を育てている内に、
「子供が絵を描くことを好きになったり、絵が今より上手になって苦手意識がなくなるためにはどうしたらいいのか?」
と思うようになってきました。
今回は絵に関する疑問を
小・中・特別支援学校で美術を指導。結婚を機に退職した後は、幼児教室の講師を務め、現在は発達障害のある子ども達を支援する仕事に就いていらっしゃり、家では小6女児と小2男児の母親でもある「Y先生」に相談し、アドバイスいただきました^^
目次
絵が上手くなる方法ってありますか?
上の子(4歳男)のお友達で、3歳前後には上手に“アン○ンマンの顔”や“人の全身”を描いている女の子が数人居て、女の子は早いなと思っていたのですが…
最近になって周りの男の子も上達していて、幼稚園などで飾られた作品を観ることが多く「上手い」「下手」がはっきり分かるようになってきたなと思ったんです。
周りの子と比べちゃいけないと思っているのですが、うちの子、下手な方なんじゃないかと思うと心配になってしまいまして、絵が上手になる方法ってあるのでしょうか?
Y先生からのアドバイス
10歳くらいまでは、個々の発達段階に応じて、どうしても絵の表現に個人差が生じます。
描画経験の差や、空間認識能力の発達加減など、あらゆる差が絵の差につながるのです。
なので、この時期は「絵の上手い・下手」という見かたはせずに、「絵を描くことが好き・楽しい」という気持ちを育ててあげることが大切だと思います。
これまでの経験から、いわゆる絵の上手い子・得意な子というのは、決まって普段からよく絵を描いている子ども達です。
たくさん絵を描けば描くほど経験値が上がり、描き方や描き方の工夫も自分で身に付けていきます。
上手くかけるようになれば、周囲からの評価も上がって自信がつきます。
そうすると、ますます絵を描くのが楽しくなる…というプラスのスパイラルが生じ、結果、絵の上手い子・得意な子になっていく感じですね。
「好きこそ物の上手なれ」これが一番の上達方法ではないかと思います。
余談ですが、傾向として「女の子は顔や表情」「男の子は動くもの」に関心をもって生まれてくるようです。
これがまた面白いことに、絵に表れてくるのですね。
女の子は人や動物、ぬいぐるみ等を好んで描きたがります。
そして男の子は車や電車、飛行機など動くものを好んで描きたがります。
時々、「びゅーん」とか言いなから線を描いている男の子がいたりします。
「何を描いているの?」と聞くと「飛行機が飛んでいるところ!」「電車が走っているところ!」とか、いきいきとした表情で答えてくれます。
大人からすれば大胆な発想ですよね?
飛行機や電車本体ではなく、飛ぶ・走るの「動き」を描いているのですから!
子どもの発想は本当にスゴイなぁと感心させられます。
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子供と絵画を鑑賞する際のポイントは?
絵が上手くなるためには良い絵画を見せるのが良いのかなと思いまして、美術館に行ったこともあるのですが、良い絵画を子供と鑑賞することは子供の絵の上達にも影響しますか?
Y先生からのアドバイス
いろいろな作品を目にすることは、感性を刺激し、センスを磨くためには有効だと思います。
絵を鑑賞することで「マネをしてみたい!」とか、「この絵なら描けそう!」など子どもの創作意欲に火をつけたり、絵を見る目が肥えていったり、メリットは他にもあるかと思います。
ただ、ここでも大切なことは「良い絵=有名な絵画」と安直に考えるのではなく、子どもが興味を持って鑑賞できるものを選ぶことができるか、そこがポイントだと思います。
絵本やお友達の絵も、立派な鑑賞の対象です。子どもの興味関心に応じて鑑賞できれば、プラスの影響が出てくるでしょう。
鑑賞することが退屈そうであれば、逆効果になりかねないので注意が必要だと思います。
私自身も、時々子どもを美術館に連れて行きますが、正直、子どもにとって美術館は退屈な場所のようです。
人が多くて自由に動けない上に、公共の場なので静かにしないといけない。見るところも多く時間がかかればかかるほど、子どもには苦痛になってしまいます。
それでも美しいものに触れさせたい思いから、絵本の原画展や体験型の美術館を選んで連れて行ったりします。
馴染みのある絵を見たり、アトラクションのような展示があったりすると、子ども達は楽しめているようです。
それでも長い時間をかけて鑑賞すると疲れてくるので、費用は惜しいですが(笑)短時間で切り上げて帰ってきます。
美術館へ行ったときの子供との作品の見方がわかりません。
ただ観るだけで終わってしまって…作品名を伝えてたくさんの展示品を観た方がいいのか、コレって物に絞って深く観た方が良いのか、美術館での絵の見方についてアドバイスお願いします!!
Y先生からのアドバイス
絵を鑑賞するという行為は、心で感じることだと思います。
作品名や解説は、鑑賞者がより作品と深く関わりたいときに読むヒントであり、画家側にしてみれば、言葉にならないものを絵に表現しているわけですから、むしろ言葉(解説)は不要なのです。
なので、いろいろな解釈で自由に見て感じるのが鑑賞の醍醐味かと思います。素直に見たままを感じるのが一番かと。
子どもと絵画を鑑賞する時は「この絵が好きか嫌いか」その程度で良いと思います。
「どこが良いと思った?」などもう少し突っ込んだ質問をすると、鑑賞が深まるかも知れません。
とにかくテンポよく様々な作品を見て、いろいろな表現があることに気づいたり、興味を持ったりすることがプラスにつながるかと思います。
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Y先生からのアドバイス
フラッシュカードは、高速で大量の情報を脳にインプットさせるための手段であり、鑑賞するといったものとは少し違ってきます。
ただ、見せ方や、カードの使い方を工夫すれば、絵画鑑賞の効果は得られると思います。
例えば、カードの絵を家の中に展示し、絵画に親しみを持たせるなど。
また、絵本を読むような感じでカードに描かれた絵のお話を考えてみるなど。
「何が描かれている?」「この人は何を考えていると思う?」など、自由にリーデングを楽しむというのはいかがでしょうか。
さらに、カードをテーマ別で仲間分けしたり、かるたのように遊んだり(題名を言って絵を当てて取るなど)ゲーム感覚で絵に触れると、より一層子ども達は楽しんで、絵画を身近に感じてくれるでしょう。
工夫次第で、美術館まで足を運ばなくても絵画に馴染み、美的感覚だけでなく、想像力や表現力を育てることが可能だと思います。
どうやったら絵を好きになる?
Y先生からのアドバイス
1、いつでも絵を描ける環境を作る
子どもが自由に絵を描ける環境(場所や時間、材料など)を用意して、とにかく描きまくらせる!
「部屋が汚れる~」「紙からはみ出さないで!」などの声かけは、子どもを萎縮させるので禁句です(苦笑)新聞紙を敷くなど対策をして、思い切り描ける環境があれば理想ですね。
とにかくたくさん描いて描画経験を積み重ねましょう。
2、褒めて認める
何を描いたのかわからない絵であっても「大きく描けたね」「色がキレイだね」など見たままの感想で良いので、プラスの言葉がけをしてあげてください。
「上手」という言葉でなくても「がんばったね」の一言で、子どもは認めてもらえた!という満足感を得て、ますます絵を描く喜びが深まることでしょう。
3、大人も一緒に楽しんで描く
大人の方が絵に対する苦手意識が強く、そうした態度や環境が子どもの意欲に影響を及ぼしてしまう場合もあります。
お料理や洗濯など、大人の真似をしたがる時期であれば、絵も同じように大人が描いている姿を見せて、子どもの「描きたい!」という気持ちを引き出してあげられると良いですよね。
親子でお絵かき、どんどん楽しんでくださいね。
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家庭での絵の指導方法は?
書き方を教えてもいい?
自由に絵を楽しんでもらいたいと思い、あまり書き方を教えるようなことはしてこなかったのですが、そうしたらいつまでも紙にぐちゃぐちゃと殴り書きをするだけの状態で4歳まで来てしまいました。
「目を2つ書いてみようか?」などと誘導してもいいものなのでしょうか?また何歳くらいから誘導はOKですか?
Y先生からのアドバイス
もし何らかの指導をするのであれば、何歳からでも構わないと思います。
とにかく、子どもが嫌がらずに楽しんで一緒に取り組んでくれるのであれば問題ないでしょう。
少し声かけ(誘導)してみて、お子さんがすんなり応じてくれるようであれば、教えてあげても良いと思います。
でも、少しでも嫌がる様子であれば、無理強いは絶対にしないでくださいね。描くこと自体を嫌いにさせてしまっては、元も子もないので。
そして、もし声かけ(誘導)が上手くいって、お子さんの絵に変化や進歩が見られたら、すかさず「いいね!」と良さを認めてあげてください。
褒めてもらえる嬉しさから、次のアドバイスも入りやすくなりますよ。
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Y先生からのアドバイス
どんどん絵を描いて見せてあげてください。
子どもの認知能力では、まだ形(バランス)が捉えきれず、思うように自信を持って描けないという場合もあります。
大人でも写真やイラストなど、何の手がかりもなしに絵を描くのは難しいのではないでしょうか。
どんなに一生懸命お手本の真似をして描いても、その子その子の味わいがしっかり味付けされてくるので心配ご無用。
初めは刷り込みであったとしても、そのうち自分なりの表現を獲得していきます。
お手本のように描きたいという憧れの気持ちは、創作意欲にもつながるでしょう。
また、お手本に近づけた!という満足感は、描画への自信にもつながっていきます。
Y先生からのアドバイス
あまり「指導」というように構えず、普段の生活の中で「絵を描くことは特別なことではなく、当たり前のことなのだ」という感覚が養えれば、それが一番自然で良いのではないかと思います。
年齢による発達段階や周りの子との比較にとらわれず、我が子の絵の変化や成長をしっかり見守ってあげてください。成長の速度はそれぞれです。
徐々に変化していく我が子の絵から成長を感じ取り、共に学んでいける喜びを味わってくださいね。
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気になる子供の絵の描き方
同じ物ばかり描くんです
うちの子(2歳4ヵ月)は2歳頃から○ばっかり書きます。
まーる。まーる。と言いながら、紙をまるで埋め尽くすのですがこれには意味があるのでしょうか?
ずっと同じ物描いていて、楽しいのかなと思いつつ、満足するまで好きに描かせているのですがいいのでしょうか?
Y先生からのアドバイス
一般的に、2歳頃はちょうど○が上手に描ける頃です。
描き初めと終わりがきれいにつながった円を描けるようになってきます。
手と目の動きを自由にコントロールして、○を描けるようになるのです。
そのことに子ども達は楽しさや喜びを覚え、ひたすらに描いていく。
これは、もう衝動ですね(笑)満足するまで十分に描かせてあげてください。
もう少しすると、やがてその○に「わんわん」などと言って、意味づけをしたりします。
さらに、○を組み合わせて顔や物など、形のあるものを描こうとしていくでしょう。
Y先生からのアドバイス
育児・教育関係の本や記事を検索すれば、年齢ごとの絵の発達というものはたくさん紹介されています。
ここでざっくり紹介するとすれば、
「なぐり描き→○を描く→意味づけ→頭足人→基底線・展開図法・レントゲン図法など」
幼少期の絵の発達段階や特徴というものは存在しています。
ただ、これらは統計学的にみて、この年齢ならこのくらい描けるという目安であり、必ずしも全ての子どもが同じような速度で習得していくものではありません。
言葉の習得と同じで、やはり個人差や育つ環境の差異はどうしても出てきてしまいます。
例え一般的な成長から遅れていたとしても、この頃の数ヶ月の差というものはまだまだ大きいものです。
焦らずに芽が出てくるのを待ってあげましょう。
さらに年齢が上がると、物を立体的に描くことや、遠近を表現できるようになります。
目安として10歳頃でしょうか。
これは脳の発達とも大きく関係してくるので、決してセンスや技術の有無ではなく、発達による差なのだと理解してあげることが大事です。
思春期を迎える頃で、人目や評価も気になる年頃…この頃から、自分の絵に自信が持てず、絵を描くのが嫌いと言い出す子が増えてきます。
一番言葉かけに注意したい時期なのです。
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失敗するとぐちゃってしちゃいます
Y先生からのアドバイス
失敗を認めたくないのは大人も同じですよね(笑)でも、裏を返せば、それは「こんな風に描きたい」というイメージは、しっかり持てている証なのです。
そのイメージ通りに技術が及ばない…その悔しさが反抗的な態度をとらせているのでしょうね。この場合の解決(回避?)方法として思いつくのは、
①途中まで大人が描いて仕上げをさせる
②お手本を描いて真似をさせる
③思い切って描くのを中断して気分転換する
…といったことでしょうか。
諦めずに描こう!なんて、下手に無理強いすると、ますます固執して描くのを嫌がる子もいます。
それでは楽しい気持ちが芽生えないので、潔く切り替えることも必要かと思います。
子どもの気持ちにゆとりがあるとき、事前に練習させてあげられるといいですね。
そのためにも、やはり普段からのお絵かき習慣と褒め褒め作戦が有効かと思われます。
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色んな画材に触れさせた方がいい?
Y先生からのアドバイス
幼児の頃は筆圧も弱いので、心材が柔らかいクレヨン等がやはり一番のお勧めです。
しっかり線を描くことができるようになれば、えんぴつやペン等も加えていくと良いでしょう。
それぞれの画材の違いを確かめながら「いろいろな画材を使えるようになった!」と子ども達は得意気な気分を味わえます。
準備や片付けなどが億劫でなければ、絵の具で紙染めやバチック(クレヨンをはじく技法)なども楽しいですね。
いずれにしても、ご家庭で無理のない範囲で良いと思います。
自分で画材を自由に使いこなせるようになるには、まだまだ先のことなので。
2歳の子はすぐ手を舐めてしまうので絵の具がハードルが高く、4歳の上の子のマネをしたがるので、上の子には固形の絵の具を水で溶いて使用する絵の具を与え、下の子も一緒に使用しました。
固形よりチューブの絵の具の方がいいのかどうかと悩んでいます。また、何歳くらいで絵の具デビューした方がいいなど目安はありますでしょうか?
Y先生からのアドバイス
ご心配されている通り、絵の具は「何でもお口に」の時期が過ぎてからが良いかと思います。
絵の具の中には体に有害なものが含まれている色もあります。
もちろん子ども用に安全に作られているものがほとんどだと思いますが、積極的に口にしたいものでもないので…。
固形絵の具は、野外でスケッチをするときなど、携帯しやすくするために作られた簡易な画材です。やはり、本来はチューブ式のものが使いやすく、混色なども楽にできます。
初めて絵の具に触れるのであれば、使いやすさからチューブの方がお勧めです。
絵の具の経験も早ければ良いというものでもないので、幼稚園や小学校で道具を揃える頃からで十分だと思います。
自分専用の絵の具が持てるようになれば、家でも絵の具を使う機会を増やせると良いでしょう。
幼稚園や学校など、集団の中では制限があってできないことも、家では自由にできるので。
小学校高学年くらいから、絵の具が嫌い、面倒くさいという子も増えてきます。
そうなる前に、絵の具の良さを知り、親しみを感じられると良いですね。
絵を評価する褒めるときはどうしたらいいですか?
本人に「上手でしょ~?」と聞かれることがあって、無意識に私、今まで上手だねって褒めていたのかなと思いまして…。
上手い、下手という褒め方はどうなんでしょうか?どう褒めるのが正解?などあるのでしょうか?
Y先生からのアドバイス
お子さんが「上手でしょ~?」と聞いてきたら、そのまま「上手だね~!」と深く考えずにオウム返ししてあげてください(笑)
子どもは自信作をかざしてきている訳ですから、それを認める他に選択肢はない…ですよね?
大人は本物そっくりに(人に伝わりやすく)描けることが上手いと判断しがちなのですが、子ども達にとってみれば、「思い通りに描けた!」という自己満足度の高さが、上手の基準なのだと思います。
大人と子どもでは上手の基準が違うので、ここは子どものものさしに合わせて、一緒に満足感を味わってあげてください。
絵を褒めるというよりも、子どもの意欲や頑張りを認めてあげる感じで、プラスの言葉かけをしてあげてください。それだけで子どもは満足して自信をつけていきます。
なるほど!たくさんの質問に答えてくださってありがとうございます!
幼児期はとにかく楽しんで絵を描けるように取り組むことが大切なのですね!
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まとめ
最後に、子どもの絵が上達するためにしておきたい3つのポイントの振り返りです!
1、いつでも絵を描ける環境を作る
2、褒めて認める
3、大人も一緒に楽しんで描く
幼児期の子ども達は絵を描くのが大好きです。
でも、心の成長とともに、思うように描けないことが嫌で、自分の絵に自信が持てなくなったり、友達の絵が良く見えたりして苦手意識が刷り込まれてきます。
そうなる前に、絵を描くことが楽しい!という気持ちが持続できるよう、身近な大人が言葉かけや態度、環境に気をつけて接してあげたいですね。
大事なのは、紙に描かれた「絵」ばかりに注目するのではなく、子どもの意欲や頑張りを認めてあげることだと思います。
長くなりましたが、最後まで読んでくださりありがとうございました。